スズハラくんとキムラさんのこと、とか
たった5つしかない話たちなのであとがきだなんて何をおおげさな、という感じではありますが。個人的にわりと思い入れのある話なのでちょろんと書き置きをしておきます。べつに面白くないと思うので、よっぽど暇な時に読んでくださいな。
「雨とピクニック」と「空色スカート」の2つの話を書いたのはまだ「散歩少年」というサイトをやっている時で、僕はふたりと同じ高校生やったりしました。その頃は今よりもう少し、ちゃんと「小説」を書こうとしていたので、その息抜きに何の内容もない話をテキトーに書くのは楽しいなあ、と思いながら書いた話たちです。するすると勝手に書けてしまった。何も考えずに書くとこういうのを書くんやな自分は、という感じで、何となく恥ずかしいけどお気に入り。感想とかも結構もらって、隙間だらけの話でも読んだ人はいろいろと埋めてくれるんやな、と気づいて楽しかった話でもありました。その後大学生になって、そんな隙のある話ばかりを書くところにしよう、と思って作ったのが「欠伸する犬」やったので、この二つの話もまあ置いとこかなと。せっかく置いとくなら続きも書こうかなと。そんな感じで始めたのがこのシリーズでした。
でも、実は続きを書くのがとても難しかった。二つの話と同じように、ふたりの高校生の日常を淡々と書くぜ、とは思うのですが、嘘くさくなってしまいそうで書けなかった。書くとふたりが離れていってしまいそうな感じ。で、しばらく放っておいたんやけど、ある日突然うわーっと書きたくなって一気に書いたのが「ミツバチのサンドイッチ」。ふたりはもう高校生じゃなくて、いろいろと変わっていて、でも嘘じゃないな、と思った。このふたりの話はそんな風に、急に書きたくなったときしか書けないんでした。全然違うところで違った風に生きてるんやけど、時々つながる。スズハラくんがちくちく猫背気味に歩いていたり、キムラさんが例のあの顔で笑ったり。ミツバチを書いたときにもう終わりは見えていたんやけど、書きたくなったのはまた時間が経ってから。うおーっとなって「夏のお墓」「クラゲの夢」の二つを書いたのは結局2007年の夏の終わりでした。何年かかったんだ? もっとたくさん書ければよかったなとは思うのですが、今から遡って隙間を埋めたらやっぱり嘘になってしまうので書けないのです。このふたりの話を好きって言ってくれる人はきっとその隙間をいろんな風に埋めてくれてるんだろうなと思います。それはとても幸せなことだ。うん。
そんなわけで、とりあえず終わり、なんですが、また書きたくなったら続くのかもしれません。クラゲみたいに流されて流されて、ふたり(と僕)がまた出会う時もあるんだろうなと思います。それはきっととても天気のよい日で。スズハラくんが先に見つけて、「キムラさん!」って、ちょっと自分でもびっくりの大きな声を出して呼び止めてしまうのかな、とか、そんな想像をしています。(少なくとも僕は、そんな話が好きです。)
2007年の終わりに。 いしだ
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